こんなときに読む記事
会社支給のノート PC や、社内ポリシーが厳しい環境では、「ブラウザだけ海外サイトや開発者向けサービスを見たいが、Windows のシステムプロキシは触りたくない」「Slack や Teams、社内 VPN はこれまでどおり直結(DIRECT)のままにしたい」というニーズがよく出ます。Clash では通常、GUI からシステムプロキシを有効化するか、TUN で OS 全体を巻き込むかの二択が説明されがちですが、本稿はそのどちらも使わず、Chrome と Microsoft Edge(Chromium 版)にだけローカルの Clash 入口を指定するアプリ単位・ブラウザ単位の構成に焦点を当てます。
全機インストールの初歩から TUN の仕組みまでを一通り押さえたい方は、Clash for Windows 系クライアントの総合ガイドや、TUN モード完全ガイドとあわせて読むと、本記事の位置づけがつかみやすくなります。ここでは両者と棲み分けできるよう、システム設定を変えないメリットと限界もはっきり書き分けます。
システムプロキシを触らない理由と限界
システムプロキシをオンにすると、WinHTTP/WinINet に従う多くのデスクトップアプリが同じ出口を共有します。意図せず社内メッセンジャーや更新プログラムまでプロキシ経由になり、認証エラーや遅延の問い合わせが増えることがあります。逆に、システム側はそのままにブラウザだけ 127.0.0.1 の Clash へ向けると、他プロセスは従来どおり直結のままにできます。
ただしこの方式は万能ではありません。ブラウザ以外の CLI(curl、git、コンテナなど)は別途環境変数やツール側の設定が必要です。また、Edge の一部機能(WebView2 を別プロセスで開く統合 UI など)は、状況によってはシステムスタックに寄るため、完全に「ブラウザだけ」と断定できないケースもあります。それでも「まずは閲覧だけ安全に分離したい」という局面では、依然として有力な選択肢です。
ステップ 1:Clash 側のポートを確認する
ブラウザから指定するアドレスは、実際に Clash(または mihomo コア)がリッスンしている番号と一致している必要があります。設定ファイルまたは GUI の「ポート」画面で、次を確認してください。Mixed Port(HTTP と SOCKS をまとめた入口)が有効なら、多くの場合は 127.0.0.1:7890 のような形で指定できます(実数値は環境ごとに異なります)。別途 port(HTTP)と socks-port が分かれている構成なら、ブラウザが SOCKS5 を選べるか、HTTP だけかを合わせます。
ここでよくあるのがクライアントの表示ポートと、実際に動いているプロファイルの YAML が食い違うケースです。サブスクリプションを切り替えたあと、古い番号のままブラウザだけ残っていると「接続できない」の原因になります。変更したらブラウザ側のプロキシ設定も必ず追従させてください。
ステップ 2:Chrome で手動プロキシを指定する
Chrome 本体に「OS と独立したプロキシダイアログ」はほぼありません。実務では次のどちらかが扱いやすいです。(1)OS の「インターネット オプション」ではなく、ショートカットの起動オプションで --proxy-server=... を付ける。(2)企業管理下でない環境なら、設定画面の「システム」セクションから OS のプロキシ設定を開くのではなく、コマンドラインやポリシーで限定プロファイルにだけ適用する。
個人利用で最も単純なのは、Chrome のショートカットのリンク先を "C:\Path\chrome.exe" --proxy-server="http=127.0.0.1:PORT;https=127.0.0.1:PORT" のようにすることです。PORT には手順 1 で確認した mixed-port 等を入れます。SOCKS5 を使う場合は socks5://127.0.0.1:PORT 形式に読み替えます。別フォルダのユーザデータディレクトリ(--user-data-dir=...)を指定すると、「仕事用プロファイルだけプロキシ付き起動」といった分離がしやすくなります。
拡張機能型のスイッチ(SwitchyOmega など)も人気ですが、拡張の権限モデルや Manifest V3 以降の制約、企業ポリシーでストアが塞がれている場合など、導入可否が環境依存になりやすい点に注意してください。まずは起動引数か PAC で動かし、必要なら拡張に移行する順が安全です。
ステップ 3:Edge でも同じ考え方を適用する
現行の Edge は Chromium ベースのため、プロキシ指定の基本は Chrome と同型です。ショートカットに msedge.exe へ同様の --proxy-server を付与するか、別ユーザデータディレクトリで「プロキシあり/なし」を分けます。Edge は Microsoft アカウントや職場アカウントのプロファイルが複数あることが多いので、「いま開いているウィンドウがどのプロファイルか」と「どのショートカットから起動したか」がずれると、設定したつもりが効いていないように見える点に留意してください。
組織で Edge が管理ポリシーされている場合、起動引数やプロキシが上書きされることがあります。そのときは IT 部門の許容範囲を確認するか、別ブラウザ(非管理の Chrome ポータブル等)で同じ手順を試す必要があります。本サイトの Copilot/Edge 統合 UI とシステムプロキシの稿では、システム側と分流ルールの兼ね合いを別角度から扱っているため、症状が「サイドバーだけ」に寄る場合はあわせて参照してください。
ステップ 4(任意):PAC で「国内は直結、海外だけプロキシ」
手動プロキシは全トラフィックが同じ出口になりがちです。Clash 側で分流(ルール)を細かく書いているなら、ブラウザは単に 127.0.0.1:PORT へ丸投げするだけで十分なことが多いです(振り分けは Clash が担当)。一方、ブラウザ側でも「社内ドメインは DIRECT」と書きたい場合は、PAC(Proxy Auto-Config)を用意し、Chrome/Edge の「自動プロキシ設定 URL」に file:///C:/path/proxy.pac のように指定する方法があります。
PAC を書くときは、FindProxyForURL 内で shExpMatch や dnsDomainIs を使い、社内イントラやローカルホストを DIRECT に回します。残りを PROXY 127.0.0.1:PORT にすると、ブラウザの出口だけを限定しつつ、Clash 側のルールと二重管理になりすぎないよう、コメントで意図を残しておくと後からの自分が助かります。
分流ルール・設定ファイルとの関係
ブラウザだけ Clash に向けても、設定ファイル内の rules は通常どおり効きます。つまり GEOIP や DOMAIN-SUFFIX による分流は、システムプロキシのオンオフとは独立です。重要なのは、DNS が fake-ip モードのときに意図しないドメインが仮想 IP になっていないか、そしてブラウザが DoH を独自に有効にしておらず、Clash 側の解決と食い違っていないか、という整合性です。
サブスクリプション提供者のデフォルト構成は「システムプロキシ利用」を前提に説明されていることが多いので、本方式に切り替えてもコアとルールセットは同じと考えて差し支えありません。迷ったら、まず Clash のログで該当ドメインがどのポリシーに流れたかを確認し、ブラウザの開発者ツールのネットワークタブと突き合わせます。
よくある詰まり
ポート番号が合っていない
mixed-port を変更した、別クライアントに乗り換えた、ファイアウォールがブロックした、といった理由で LISTEN が消えていると、ブラウザは即タイムアウトします。ターミナルやリソースモニタで該当ポートを確認し、YAML と GUI の両方を見直してください。
別プロファイル/別ショートカットで起動している
プロキシ付きショートカットで開いたつもりが、タスクバーのピンから通常起動していると、設定が効いていません。仕事用と個人用でユーザデータディレクトリを分けると混乱が減ります。
システムプロキシと二重化している
検証の途中で OS のプロキシもオンにすると、想定外のループや遅延が出ます。本稿の運用ではシステムプロキシはオフに固定し、ブラウザ側だけをローカル Clash に向ける、と決め打ちすると切り分けが楽です。
まとめ
Chrome と Edge に限定して Clash を使い、システムプロキシは変更しない構成は、オフィス用途の「閲覧だけ切り出す」には非常に現実的です。手順の骨子は、(1)コアのポートを確定する、(2)ブラウザ起動オプション・PAC・または限定的な拡張でそのポートへ向ける、(3)プロファイルと二重化を整理する、の三点です。分流の細部は引き続き設定ファイル側に任せ、ブラウザは入口を一本化すると運用が簡潔になります。
クライアントの入手と各 OS 向けパッケージの整理については、常に本サイトの導線を起点にすると、説明と注意事項を一括で確認できます。オープンソースのリポジトリはライセンスやソース確認用として別途参照し、実行ファイルの第一入手先を混同しないようにすると安心です。
Clash クライアントを無料でダウンロードする → 安定したルールエンジンと GUI の組み合わせは、ブラウザ単位のプロキシ運用とも相性がよく、同種ツールと比べても設定の見通しの良さを実感しやすいはずです。